2025/06/20 16:16
KINUシリーズ 予約受付開始のお知らせ
こんにちは、健一郎です。
大変ご無沙汰しております。この度、KINUシリーズの予約注文を受け
付けることになりましたので、久しぶりに筆を執りました。
KINUシリーズは、2024年に工房が新しくなったタイミングで作り始めた白磁の作品です。
独立したばかりの頃は「ZERO」という名で白磁を作っていましたが、染付や子供用食器が好評をいただくにつれて、だんだん作らなくなっていました。
新しい工房には電気窯を導入したのですが、電気窯で染付ばかりを焼いていると、電熱線が傷んでしまいます。
そのため、窯に負担の少ない焼き方(酸化焼成)での作陶が必要となり、いっそのこと酸化で白磁を作ってみよう、
という流れでKINUシリーズは誕生しました。
KINUシリーズで使用している土は、天草で採石された「撰上(えりじょう)」という種類の土です。磁器は還元焼成で焼くと真っ白に仕上がりますが、酸化焼成で焼くと鉄分が反応して、わずかに黄色みがかった色になります。
撰上は鉄分が少ないため、酸化焼成でも柔らかな黄色みがかった白色に焼き上がり、温かい雰囲気を醸し出します。
また、陶土の微粉末を塗って焼成する「テラシギラータ」という、紀元前ヨーロッパの技法を用いています。
これにより生まれる、光沢のあるマットな質感は、磁器土本来の素材感をそのままに表現しており、僕自身も大変気に入っています。
この技法は、要するに目止めをして焼いているため、マットでありながら色移りしにくく、
カトラリーの引っ掻き傷も付きにくいという点が大きな利点です。
実は、僕が陶芸の世界に入る前は、イタリアンのレストランで働いていました。
当時使っていたのは業務用の白磁のお皿で、作家ものの器を使うような高級店ではありませんでしたが、地元では少し名の知れたレストランでした。そこで主に前菜とデザートを担当しており、デザートソースでデコレーションをするのが好きな仕事の一つでした。
お客様から直接お褒めの言葉をいただくこともあり、とてもやりがいを感じていました。
KINUシリーズを作るようになって、ウェブショップの商品写真を撮影するため、「薪の宿から」の高岡さんに料理の盛り付けをお願いしました。
高岡さんからは「とても使いやすい、料理人向けの器だね」と嬉しいお言葉をいただき、その場でパスタ皿の注文までいただけました。
レストランで働いていた頃は、「いつか自分のお店を持ちたい」と漠然と考えていました。
僕が作った器を飲食店で使っていただけることは、まるで私の夢が誰かに引き継がれるような感覚で、夢を諦めたというネガティブな感情が昇華され、すごく助けられた気持ちになります。
個展の在廊などで都会に出向いた際、器屋さんに新作を見てもらうために尋ね歩くのですが、KINUシリーズはどこで見せても「業務用の洋食器だね」と言われることが多くありました。
縁が反り返った「杵形(きねがた)」の形状は和食器から着想を得ており、ミリアムからも「この形はヨーロッパにはないね、和食器の形だと思うよ」と言われたほどです。そのため、私自身は洋食器だとも業務用だとも、特に意識して制作していたわけではありません。
これまでstudio waniでは家庭用食器を中心に制作してきましたが、工房を新築し、その返済も控えているため、「studio waniは家庭用食器を作る」というこだわりは一旦置いておくことにしました。
飲食店でのまとまった数量の需要を考慮し、今回は5枚からのセット販売とさせていただきます。
全て手作業で制作しているため、若干のサイズ違いはご容赦ください。
「サンプルを直接見てみたい」といったご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。在庫に余裕があれば、郵送することも可能です。