2022/04/18 11:47

A級品とB級品の区別というのは私たちの大きな課題の一つです。

例えば「鉄粉」についてですが、磁器の原料である陶土は簡単にいうと岩を砕いて粉にしたもので、当然ながら天然のもので不純物も混じっています。
岩をはつったり水篩したりなどして不純物が取り除かれますが、取り除き切れないものもありそのような不純物は黒い点として器の表面に現れます。どんなに気をつけていても、ある程度は鉄粉が出てしまいますし、そして場所も大きさも様々です。

染付の作品は古伊万里の雰囲気を出すために意図的に鉄粉が出るように作っています。
鉄粉は作品の「味」となっていますが、恐竜の顔に重なってしまったり、あまりに大きな鉄粉が出てしまったものはB級品として正規の流通から外しています。

昨今、世の中に流通している磁器は真っ白なものがほとんどで、それは消費者の手元に届く前に厳しい検品で弾かれているからです。
そこに私たちは最近の磁器は白すぎると感じ、厳しすぎる検品に多少なりとも疑問を感じています。

鉄粉が全くない真っ白な磁器も多くの企業努力の集結なので否定するわけではありませんが、せっかく作ったものが些細な理由でロスとなってしまうのは勿体無いですし、環境負荷の事も考えてもっと受容できる世の中になるようにと願っています。

幸いながら私たちの製品のほとんどは中間業者が入ることがなく、ダイレクトにお客様の手に届きます。
顔が見えないウェブショップなので検品は厳しめは行っていますが、お客様が「手にした時に喜んでもらえるように、残念な気持ちにならないように」というのを基準にして多少の鉄粉など通常ではB級品と判断されてしまうものでもA級品としています。

そこに明確な線引きがないので何とも判断が難しい所ですが、何卒ご理解いただけたら幸いです。
「自然なものが自然なままであって良い」と受け入れられる世の中になるように。


・鉄粉
冒頭でも説明していますが、生地の中の鉄分などが焼成後に黒い点となって表面に現れているものです。
元々陶土の中には鉄分が含まれているので、ある程度は鉄粉が出てしまいます。
そして私たちの工房はとても古い建物ですので、風が吹くと埃が落ちてきてしまいます。
窯詰前にはコンプレッサーで吹き飛ばしていますが、そういった埃が残っていると鉄粉として出てきます。
仕上がりを白くしたい子供用食器では鉄粉が出て選別から外されているものが多いです。

染付の恐竜シリーズは砂を混ぜていますので、大小さまざまな鉄粉が出るように作っています。
SHINOGIのシリーズは削り粉を使って作っているのでランダムに鉄粉が出ます。
使用には問題ありません。


・呉須飛び

絵付けをした作品の絵の具(呉須)が別の場所で発色しているものです。
絵付けの際に、呉須(絵の具)がはみ出てしまったり間違えた部分は削るなどして修正しています。
削りカスは吹き飛ばしていますが、残念ながら器に残ってしまい絵付けしていない部分に色飛びしてしまうことがあります。
または絵付けをした部分を誤って手で触って指に絵の具が付いてしまい、さらに別の部分を触って絵の具を移してしまったりしたものです。
初歩的なミスなので気をつけていれば防げるものです。
使用には問題ありません。


・フリモノ
窯の煉瓦や棚板のかけらなどが焼成中に器に落ちて焼き固まったモノです。
指で触ったらポコっと突起があり、大きいものは食器洗いをする時にスポンジが引っかかったりします。
尖っていて怪我しそうなものはリューターで削っています。削ったものは削った跡が残ります。
使用するには問題ありません。


・歪み
成形途中や乾燥中、焼成で歪んでしまったものです。
お皿のふちが開いてしまったり、中心が落ちて棚板とくっついてしまったり。
丸くしたかったけど、丸くなかったり。
コップだと腰が落ちてぽっちゃりしてしまったりします。
使用には問題ありません。
根本的な技術力に寄るものなので、日々の精進が必要です。

・生地の個体差
ひとつひとつロクロで手作りしているので、大きさや形状、生地の厚みなどの個体差がある場合があります。
(厚みの違いは実際に手に持っていただくと分かりやすいですが、視覚的にお分かりいただけるようにライトを当ててみました)

・ヒビ


ヒビは焼成途中で割れてしまったものです。
焼いてる途中に割れたもの「焚き割れ」と、焼成が終わって冷める途中に割れるもの「冷め割れ」の2種類に分かれます。
「焚き割れ」は焼成前や焼成途中で割れているので、ヒビ部分の釉薬は熔けています。
「冷め割れ」は冷却途中で割れているので、断面が鋭利で指を切ったりします。

「焚き割れ」はヒビがある分強度は落ちますが、通常使用する分にはさほど問題はありません。
「冷め割れ」はそのまま使用するにはちょっと危ないです。金継ぎの練習用などにお使いください。

・絵付けのミス
絵付け部分の失敗です。
目を描き忘れてしまったり、絵の具が薄かったり、濃かったり、人的ミスなので減らしたいものですがたまにやってしまいます。
使用には全く問題ありません。

・ぶく
生地の中に空気が入っていて、焼成で空気が膨張したものが器の表面に突起となって現れるものです。
染付の恐竜シリーズには大小異なる大きさの砂を混ぜているので、陶土中に空気が入りやすくぶくが出ることはとても多いです。
大きなぶくが出ることはそうそうありませんが、B級品として販売する分は大きなぶくは外してあり、お届けするのは使用する分にはとりわけて通常使用する分には問題はないと判断した物を選んでいます。。
ただ、風船のような状態になっているので突起が割れる可能性も十分にございます。
急激な温度変化によりぶくの中の空気が膨張し割れることがありますので、使用の際はお気をつけください。

・サンプル、その他

サンプルや廃盤となったもの、形やサイズを間違えて作ってしまったもの、アイデアを元に作ってみたけど焼き上がりがイメージと違ったものとか、良く言うと1点ものです。
特に不良品ではありませんが、正規のラインナップとして加える事は出来ないものなので、気に入ったものが見つかればそれは掘り出し物かもしれません。