2021/04/09 22:42


こんにちは、


今回はstudio waniのこども用食器の生地を作ってくれている「アトリエビスク」の太田さんを紹介したいと思います。


太田さんに初めて生地をお願いしてからまだ2年も経っていませんが、すでに彼女がstudio waniの商品に大きな影響を与え、欠かせない人物になっています。


こども用食器の生地を外注したいとずっと前から考えていましたが、丁寧なろくろの生地屋さんを見つけるのはなかなか難しくて、ほとんど諦めかけていました。

妊娠中だったこともあり、こどもが産まれたら仕事ができる時間が減ってしまうので、生地の生産は本当に困った問題でした。


その時に「松原工房が解散する」という話が私たちの耳に入りました。


憧れの「松原工房」は女性陶芸家二人が波佐見で立ち上げた会社で、可愛い手作りの作品が大人気を集めていました。

「波佐見で、二人で、手作りで」は私たちがやろうとしていた事と一緒だったので、独立する前から彼女たちには色々と相談させてもらい「松原工房」を参考にして、そして目標にしていました。


「松原工房」の二人の成功は私たちの自信にも多くつながっていたので、

studio waniを立ち上げたばかりのタイミングで解散すると聞いたのは大きなショックでした。


ただそこには「グッドニュース」もありました。

デザインと絵付けを担当していた方は波佐見から離れる事になりましたが、

もう一人のろくろと窯を担当していた太田さんは波佐見に残り生地屋さんとして独立するというニュースでした。


すぐに話をしに行きました!


伝統工芸士の資格を持っている太田さんは私たちの子供用食器を作ってくれるのか?

あまりも地味な仕事なので受けてくれるのか?と心配しながらお願いしてみましたが、

オーケーが出ました!


太田さんが2019年の7月に新しい工房の「アトリエビスク」(ビスク=素焼)をオープンしたらすぐに生地の注文をさせてもらいました。


初めて生地を納品してもらった時は太田さんと仕事ができてどれだけラッキーだったかがわかりました。

studio waniの子供用食器は形に結構拘っています。

お皿は高台ががない、角が丸い、銘版を書く凹み、カップの持ちやすいライン、飯碗のカフェオレボールのような形…

色々普通の和食器と違うディテールがありますが、

太田さんはすぐに全てを理解してくれました。


生地をお願いする時は作って欲しい器のサンプルを持っていきます。そのサンプルをコピーするのが生地職人さんの仕事です。

寸法を測ってサンプルの通りに作りますが、作り手はロボットではなく人間なので、自動的にコピーする事ができません。

見本の形を手と目と脳で理解しながら、自分で改めて生み出さなければなりません。


作っていくたびに職人さんの手が慣れていき、サンプルの形が自分なりに気持ちよく作れるようになれば、良い器ができると思います。

太田さんが作ってくれている食器はそうだと思います。

ワニのデザインですが太田さんの丁寧な性格とセンスがものに出ていると思います。



サイズを測る道具の「トンボ」です。

太田さんのところには「トンボ」がたくさんあります。


トンパンにstudio waniのグラタン皿、小皿とプレートが干してあります。



でも太田さんは生地職人だけではありません。個人作家の活動も同時に進んでいます。


「アトリエビスク」の作品のデザインと色味はシンプルで明るいです。写真でも伝わると思いますが、触ってみると手作りの暖かさとマットな釉薬の柔らかさに気付きます。




これは「ろくろの一級技能士」の資格と「伝統工芸士」の資格です。

これは試験で作った蓋付きご飯茶碗です。



太田さんは「ろくろの一級技能士」の資格と「伝統工芸士」の資格を持っています。


資格を取る試験を受けるのは12年のキャリアを持つ職人のみで試験がとても難しいです。

専門知識のペーパテストと実技試験があります。

波佐見は元々大量生産の産地なので、職人には作る技術だけではなくスピードも求められました。

大きな難しい形の作品を作れるよりも、全く同じ形の器を早く作る技術を目指しています。


だから試験の一つは決まった時間で蓋付きの飯碗を5個を仕上げる事です。

焼いた後は寸法を図って、蓋がぴったり収まるかどうかを確かめます。


試験は毎年行われているので、何回も受けても大丈夫ですが太田さんは一回で合格されました。


現在は太田さんが女性で唯一の「波佐見焼 ろくろの伝統工芸士」になっています。

ろくろは女性ができない力仕事と言う訳ではありませんが、波佐見の分業システムではずっと男性がやって来た仕事です。

伝統的な分野でも女性の社会進出が大事だから、私も資格をいずれ取りたいと思っています。

ただ全く同じ器は2個も作れませんので、本当にチャレンジするならかなり練習が必要だと思いますのでしばらくは無理です… 

でもカッコイイ!


アトリエビスク


生地職人。長崎県波佐見町にてろくろで磁器の器を制作しています。
○今後の展示会→6/23(水)〜29(火)長崎浜屋
○波佐見焼伝統工芸士○一級技能士[手ろくろ成形部門]
長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1482-13 
ギャラリー13:00〜17:00定休日曜
📞0956-85-4222


インスタは@atelierbisque